・インデラ・カレーにまつわる話・
カレーライスと印度料理の名人になろう
おいしいものを介して交流を
インデラ・カレーの50年

おいしいものを介して交流を

「ナイルレストラン」オーナー G.M.ナイル

 私の父は、インド独立運動の闘士でした。日本に来て、独立運動の活動をしていたのです。第二次世界大戦も終わり、やがてインドは念願の独立を果たしました。しかし父はインドヘは帰らず、インド独立の支援をしてくれた日本とインドの友好のために、自分の生涯をささげようと思ったのです。  さて、日印友好のために最もよい方法はなんだろう。そこで父が思いついたのは料理でした。おいしいものを介した交流こそが、最も平和的なものではないかと考えたのです。 当時日本には、インド料理はもちろん、外国の料理文化はほとんど入ってきていませんでした。インド料理店は無論どこにもありません。父の興したこの店が第一号店です。私は学生のころからこの店の手伝いをしていました。ですからほかの店で働いたことはありません。若いころインドの高級レストランに修行に行ったことはありますが……。そう、私は日本生まれの日本育ちなんですよ。だからというわけでもありませんが、私はインド料理だけでなく、和、洋、中、どの料理でも作れます。

 そんな私からみた日本料理の特徴は、そのユニークな発想にあると思います。だってインドのカレーを西洋のパンのなかに入れて“カレーパン”だなんて考え付いた国が世界中のどこにありますか?日本のうどんのなかにカレーを入れて"カレーうどん"だなんてまさに日印友好ですよ。この柔軟な感性を日本人にはこれからも大事にしてもらいたいですね。

 私の息子が昨年までインドの料理学校に、向こうの料理を研究するために留学していた時、よく“日本の調味料などを送ってくれ”と頼まれました。焼肉のたれを送ったところ先方で喜ばれ、どうも向こうの料理学校ではそれらを研究しているようすでした。いずれその研究を生かした、新しいインド料理が生まれてくるかもしれませんね。
 息子は現在卒業して、私と一緒にナイルレストランのオーナー代理として店でインド料理を研究しております。

 インド料理の特徴はなんといってもスパイスでしょう。ご存じかもしれませんが、いわゆるカレーの材料として使われるスパイスの多くは、漢方薬の材料としても使われています。つまり、とても健康によいものなのです。

 中華料理は四川、広東、北京、上海、と4つの地域によってその特徴が大きく分かれます。インドもその料理の特徴によって、大きく4つの地域に分けることはできますが、むしろそれぞれの家庭によって特徴が違ってくるのです。私の店はそんなインドの家庭料理を出しています。現在皆さんにも耳なじみになったと思われる"ナン(インドのパンの一種)"などは出しておりません。あれは高温のかまどのなかでしか作れないものです。そんなかまどは普通のインドの家庭の台所にはありませんよ。つまり、営業用の料理なのです。

 私の店には場所柄、著名人が大勢やってきます。ですが、店が混んで並ばなければならないときは、誰であろうと皆さん平等に並んでもらいます。そういう姿勢だけはこれからも変えません。おいしいものを皆で楽しく食べるためには、同じテーブルに一緒に着くのが基本でしょ?

G.M.ナイル プロフィール
昭和19年 生まれ  インド国籍
東京農業大学畜産学科卒業
昭和25年に父A.M.ナイルが開店した、日本で1番古いインド料理専門店「ナイルレストラン」の2代目オーナー。父の「日印親善は食から」との意志を受け継いでいる。
 現在、テレビ、雑誌、新聞などで料理家・評論家としても活躍中。また、様々な各種学校、大学にも講師として招かれている。
 警察評論家としても、多忙であり、無類の警察好きが高じて個人の「警察資料館」を所有している。